医局とは?

 医局のメリット・デメリット

注意;このページは、医療関係者、特に医学生の皆さんや、研修終了後の先生達のためのものです。一般の方はご遠慮ください。

 入局を考えている学生さん・研修終了後の先生達のために「医局」について自分なりの意見を書きます。僕自身も入局するまで「医局」が何なのか全く分かりませんでした。最近は「白い巨塔」などが流行ったこともあり、「医局」は諸悪の根元のように言われ、デメリットばかり強調されますが、決してそれだけのものではありませんので、また違った視点から一言書いておきます。ただし、下記はあくまで私的な意見ですので、そのつもりで読んでください。

 第二内科では、医局に入局した後は、それぞれの当科の指導医のいる病院、または当院で、専門医のための研修をうけます。そのまま、一般病院で働き続ける先生もあれば、大学に戻ってきて、大学院生となり、実験・研究に2-3年没頭する先生もあります。その後は、大学で学生や後輩を指導する人もあれば、一般病院で日常診療をこなしながら後輩の指導をする人、そして、開業する先生もあります。

 一つの病院で最初から一生勤めるというのも、もちろん悪くはありませんが、それぞれの病院で、患者層や設備、指導医も異なりますので、最初のうちは、2-3年ごとに病院を変わって研修することは、大変勉強になります。医局に属さず、自分で探すとなるとなかなか大変ですし、一度落ち着いてしまうとあえて変わろう思わなくなると思います。また、第二内科の関連病院は静岡県内だけですので、旧帝大のように日本全国に関連病院があり、北陸へ行ったり関西へ行ったり東海地方へ行ったりと、極端に遠くまで動くことがないのも、うちの科の特徴かと思います。結局、静岡県は、300万人以上の人口を抱えていますが、医科大学は一つだけですので、非常に需要が多くて供給が追いついていないのが現状です。

 また、一般病院では、臨床能力はつきますが、日常臨床に追われて、臨床研究をやったり、英語の文献に触れたりする機会はどうしても減ってきます(もちろん熱心にやっているところはありますので全てというわけではありませんが、大学病院と一般病院を比較した一般的な意見としてです。逆に大学にばかりいては、専門的なことに関しての臨床能力は大きく向上しますがが、内科なら一般内科としての臨床能力については、どうしても落ちてしまうでしょう)。一般病院で専門医としての研修を数年終えて、大学に一度戻って実験や研究をする機会があれば、患者さんのデーターをまとめて論文発表・学会発表したり、生化学などの実験を通して日々オーダーして結果を見ていた検査の意味を深く知ることになったり、また違った視点から医学の世界を見ることができるようになるはずです。つまり、大学は自分で計画して実験したり、臨床研究をしたりして、英文の論文を書いて世界に向けて発信する方法を学ぶ場であり、そういったことをする環境が整っている場所であり、そういったことを指導できる人がそろっている場所でもあります。大学で研究に携わって、さらに研究者の目をもって日々の診療ができるようになれば、また一般病院に勤務したり開業しても、日々の新たな発見や、医師としてのやりがいはさらに大きくなることでしょう。

 また、大学ではより多くの専門家が集まっていますので、先輩の先生にいろいろ相談しやすいと言うこともあります。さらに、先輩の先生方は学会などを通して全国に知り合いがいますので、困った症例などは、さらに広く相談できます。また、学会などに参加すれば、先輩の医師を通して、さらに優秀な医師と知り合いになることもできます。

 地域社会における医局のメリットについても考えてみます。医師不足、医師不足と言われ、それは大学病院の医局が根元のように言われますが、もし、それぞれの病院が独自に人を集めようとすれば、今以上に集まらないはずですし、また調整にも苦労するはずです。大学の医局を通すことで、女医さんの産休などについても、融通を利かせて、非常勤医師だったり、常勤医師を調整することができるので、地域医療にもだいぶ貢献しているはずです。

 現在、医局を廃止して、大学が全体として、医局のような人事をおこなうという話もありますが、結局は、それぞれの医師の力量、性格など異なりますし、特に、この専門性の高い領域では、なかなか外からそれを判断するのは難しいところがあります。それぞれの科で、医局長(みんなのまとめ役。雑用が多く、みんなに意見を言われる大変な役。ボランティアです)を中心とした人たちが、適材適所を考えて、大学をはじめ、地域社会の病院へ割り振っているために、これだけ少ない人数の中でも回っていくのではないでしょうか。その辺りを全く理解していない、事務方の人が、ランダムに配置をしていてはうまく回らなくなってしまうのではないでしょうか。

 入局を堅く考えず、うまく医局を利用して勉強するくらいに考えてもらえれば良いと思います。入局したら一生、第二内科に尽くさなければいけないというようなことではありませんし、もし入局してどうしても合わないようならやめればいいわけですので、一度気軽に相談してみてください。医師の労働組合はありませんが、医局というのは、同じ地域で同じ専門の職業を持ったもの同士が集まり、お互いに助け合って、さらに職場の環境を改善したり、地域の医療に貢献したりする場だと思います。もちろん、いろんな人が集まりますので、ある程度雑用を引き受けたり、我慢しなければならないところもありますが、それはお互い様で、それぞれが力を合わせることで、さらに大きな力となって一人一人が活躍できるようになる場ではないかと思います。また、妊娠出産、病気や不幸など、人間ですので、どうしても休まなければならない時もありますが、患者さん相手だと、急に休めないのがこの仕事のつらいところですが、医局に属して、大勢で動いていて、みんなで助け合えば、そういったところは、少なからずカバーできます。

 家族でたとえるならば、一生一人で過ごすのがよいか、結婚して家庭を持つのがいいかに似ているかもしれません。一人の方が気楽でいい面もありますが、いざというときに、困ったり、寂しい面もあります。また、結婚して二人で力を会わせれば幸せな家庭が開ける場合もありますが、うまくあわず離婚してしまうこともあります。結局はその人の人生なので、どちらが絶対と言うことは言えませんが、医局に関して、「白い巨塔」をはじめ、デメリットばかり言われますが、明らかにメリットも多いので、そのあたりをうまく利用しない手はないと思います。ただ、医局も、人の集まりですので、それぞれに特徴があり、合う合わないはもちろんあります。まずは、気軽に、相談したり見学してみてはいかがでしょうか。

繰り返しますが、以上は、あくまで私的な意見ですので、注意してください。

浜松医科大学 第二内科(内分泌・呼吸器・肝臓)医局案内ほか(医療関係者用)