甲状腺の病気について  

 甲状腺の検査・病気(橋本病(甲状腺機能低下症)・バセドウ病(甲状腺機能亢進症)・甲状腺癌ほか)


はじめに(頻度など)

 大変多い疾患にもかかわらず、誤解が多いのが甲状腺疾患です。

 病気の解説は後で詳しく行いますが、橋本病なら10人に1人、甲状腺結節も10-20人に1人あると考えられます。

 また、甲状腺の異常は、検査は簡単なのですが、医療関係者でも気づきにくく、発見が遅れる場合があります。

 さらに、これらの異常は、20-40代の女性に多く、必然的に妊娠と重なることも多く、心配されることが多くあります。結論から言えば、方法は確立しているので、適切な診断と治療を受けていれば心配はいらないという事です。


甲状腺とは?(位置・検査について)

 甲状腺とは、首のところにある臓器で、甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンは適切な量が必要で、少なすぎる状態(甲状腺機能低下)の代表が橋本病、多すぎる状態(甲状腺機能亢進)の代表がバセドウ病です。

 基本的には採血検査とエコー(超音波)検査でほとんど診断つきます。場合によっては、放射線の検査が必要になることもあります。

まず、血液検査ですが、

fT4(フリーティーフォー)は甲状腺ホルモンの検査です。これが、甲状腺ホルモンそのもので、高い場合は甲状腺機能亢進、低い場合は甲状腺機能低下です。

さらに大事なのは 甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。これは、甲状腺を支配する、頭(下垂体)からでているホルモンで、前述のfT4が下がったり、上がったりする前に、先にこちらが動きます。つまり、fT4が正常でTSHが上がっている状態なら、頭から甲状腺に働きなさいと言う命令が強く出ていて、甲状腺が働いて、なんとか甲状腺ホルモンが正常に保たれていると読みます。つまり、fT4は正常ですがTSHが上がっているので、甲状腺機能低下ということです。

その他、下記のような抗甲状腺抗体というのがあります。

バセドウ病は、TRAbTSAbのどちらかが陽性で診断されますし、

橋本病の診断は、抗TPO抗体(マイクロゾームテスト)または抗サイログロブリン抗体(サイロイドテスト)が陽性で診断されます。

もちろん例外はありますが、簡単にはこういったところです。


甲状腺の病気について

まず、橋本病についてですが、

 橋本病と言えば、基本的には甲状腺ホルモンが足らなくなる病気ですが、いろんな状態があります。

 甲状腺ホルモンが正常で、抗甲状腺抗体と言って、橋本病の素質だけみられる方も多く、いわゆる橋本病の初期状態と考えられます。もちろん治療は不要で、年に1回くらいの定期検査でよいと思います。
 また、甲状腺ホルモンは正常だけれど、頭の方からでている甲状腺刺激ホルモン(TSH)だけ少し上がっている状態(TSHが10くらいまで)の方もあります。これは、やはり、甲状腺自体が少し弱く、その分、がんばりなさいという頭からの刺激が多くでていますが、現在のところはホルモンは正常であるという状態です。この場合は、数ヶ月毎の定期的な採血で様子を見ればよいと思います。
 そして、甲状腺刺激ホルモンが高く上がった状態(およそTSHが20以上)では、甲状腺ホルモン剤を飲む必要があります。甲状腺ホルモン剤は、体内のホルモンそのものなので、副作用がない上に、1週間くらいかけてゆっくり効くために、1−2日飲み忘れてもたいして影響がないのも特徴です。安全で、また昔からあるので安くて、そして飲みやすい薬です。
 もちろん、薬を飲んで正常になっていれば、妊娠出産は全く問題ありません。

次に、バセドウ病についてですが、バセドウ病は、甲状腺ホルモンが多すぎる状態です。

 症状としては、脈が速くなりドキドキしたり、イライラしたり、汗をかきやすくなったり、手が震えたりなどです。中には目が出てくる人もあります。
 この病気は、検査をすればすぐ分かりますが、本人も、周りも気づきにくく、時には、精神疾患や、自律神経失調症、精神的なものとして片づけられ、適切な治療を受けていないことも見られます。
 治療は、内服療法と、放射線療法、外科治療の選択肢があります。
 内服療法は薬を飲むだけですが、3-4割の方が、3年くらいで薬をやめられますが、ずっと飲み続けなければ行けない人も多いと言うことです。また、副作用として10%に肝機能障害、10%に蕁麻疹などがみられ、500人に1人に、白血球減少がみられます。いずれも早くみつけて、薬をやめれば治りますが、発見が遅れると重症になる場合がありますので、定期的な検査が必ず必要です。特にこの薬を飲んでいて、高熱が出た場合には白血球減少の可能性があるので、すぐ血液検査をする必要があります。しかし、妊娠出産にはこの薬をのんでいても基本的には問題ないので、副作用に注意しながら、治療していけば大丈夫です。実際多くの方が妊娠出産を経験しています。  
 放射線療法は、放射能をだすカプセルを飲むとそれが特異的に甲状腺に集まって甲状腺を壊して治療するものです。基本的には飲むだけですので簡単ですが、適切な量を決めるが難しく、壊れすぎて、結局ホルモンが低下し、一生ホルモン剤を飲む必要が出てくる場合もあります。また、放射線を使うので、利用できる施設が限られています。
 外科療法は、甲状腺自体を手術で切除し、小さくするものですが、これも、とりすぎたり、残りすぎたりと、適切な量を決めるのが難しく、手術したのに、薬を飲まなければいけないことがあります。副作用で薬が使えない場合などに選択することがあります。
 いずれにしても、治療法は確立しているので、発見されれば、適切に治療していれば心配ありません。問題なのは気づきにくく、発見されるまでに時間がかかってしまうと言うことです。

 それから、亜急性甲状腺炎とは、甲状腺の風邪のようなもので、一時的に甲状腺が壊れて痛み、甲状腺機能が亢進しますが、痛み止め等で様子をみれば、いずれ治りますので心配はありません。症状がひどい場合にはステロイドを使います。

 また無痛性甲状腺炎というのがあり、これは橋本病の患者さんが、一時的に甲状腺機能が亢進したり、低下したりするものです。これは、一時的に何かの影響で甲状腺が壊れ、まず甲状腺機能が亢進し、その後低下、そしてもとに戻るというものです。全く痛みがないので、気づかないことも多いのですが、検査でたまたま見つかることがあります。いずれ治りますので、経過をみていれば大丈夫です。

 甲状腺腫瘤は、良性腫瘍、悪性腫瘍(癌・ガン)、甲状腺嚢胞があります。
 嚢胞は水の袋のようなもので心配はありませんが、あまり大きくなってしまう場合には、針を刺して内容を抜く方法がありますが、またすぐ大きくなることが多いのでアルコールを注射して、小さくする方法もあります(PEIT・ペイト)。
 結節状に、かたまりがある場合には、針を刺して良性か悪性か検査をする必要があります。これは、採血する針と同じもので、2-3回、直接甲状腺の結節に針を刺し、吸引してそこの細胞を調べるというもので、外来で簡単にできます。甲状腺の結節は非常に多く、そのほとんどが良性です。たまに悪性のこともありますが、ほとんどの悪性腫瘍が、悪性にもかかわらず、進行がゆっくりで、予後がよいので、もし悪性であった場合にも早めに手術をすればだいじょうぶです。
 結節がある場合には最低年1回のエコー検査を行い大きさが変わらないか見る必要があります。針を刺して細胞の状態を見る検査も、大きさが変わらなくても最低2回くらいはやってみる必要があると思います。

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 ここに記載したのは一般的なことです。実際の病気の診断・治療法は、一人一人の年齢や合併症の状態などによりそれぞれ変わってきますので、基本的には主治医と納得いくまで相談の上、検査・治療を受けてください。

 実際に、本人を見ないでメールだけの相談は、お互いに不十分な資料や知識での話になり、誤解が誤解を生み、良い結果を招きませんので、もし、主治医と十分話し合っても現段階の治療にどうしても満足されないような場合には、セカンドオピニオンを求めて、他の病院を受診されることをおすすめします。


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